仙台・名取・岩沼の復興住宅、傾聴ボランティア活躍 会話でつながり実感を /宮城

お茶会や安否確認、電話サービス NPO法人

 東日本大震災以降、仙台や名取、岩沼の3市の災害公営住宅(復興住宅)でお茶会などを開催し、被災者の話に耳を傾ける「傾聴ボランティア」に取り組む団体がある。団体は、名取市のNPO法人「仙台傾聴の会」。今年で9年を迎え、地域のコミュニティーづくりにも力を入れている。同会代表の森山英子さん(69)は「話を聞く場をつくることで、被災者の心の悲しみが少しでも救われ、人とのつながりを実感してもらえればいい」と話す。【真田祐里】

はき出すことで楽になって

 11月8日、名取市の美田園北集会所であったお茶会「傾聴カフェ」。被災者の高齢女性12人とボランティア女性5人が談笑していた。孫や料理の話で盛り上がる中、70代の女性がぽつりとつぶやいた。

「こないだね、前に居た仮設(住宅)に行ったの」。そしてすぐに言葉を継いだ。「(仮設住宅に居た時は)立ち直るのに時間がかかってね。こんではだめだなと思って、最初に出て行ったのがこのお茶会だった」

 女性は少し間を置いて続けた。「こっちに引っ越してきて正直やっていけるのかなと思った。でも、こないだお父さん(夫)が『お母さん、こっからどこにも行かなくていいのか』って言ったの。あまりしゃべらない人が言ったから、私も安心してね」

 ボランティアの女性がうなずきながら「ここからが本当の再出発なんだね」と語りかけると、女性はほほ笑んだ。

 同会は2008年設立。当初は、生活苦や病気などで自殺を考えている人たちの話に耳を傾ける活動に取り組んでいた。しかし震災後は、宮城県医師会や名取市から依頼を受け、避難所で被災者の話を聞くようになった。その後、仮設住宅の入居者の心のサポートにも力を入れるようになった。

 現在は約200人のボランティアが月1回、復興住宅などでお茶会を開いている。スタッフの一人、嶋脇ウタさん(70)は「話を聞くだけでアドバイスもできないから、これでいいのかなって思う時もあった。でも、はき出すことによって、気持ちを楽にしてもらえたらそれでいい」と話す。

 名取市は来年4月以降、仮設住宅を閉鎖し始めるため、入居者の多くは復興住宅に転居する予定だ。森山さんは「復興住宅に入ってついのすみかができ、自分の気持ちと向き合う時になった。そんな時に近隣の人とのつながりを実感することは大事」と話す。傾聴カフェに訪れた美田園北団地に住む高橋香代子さん(68)は「家でテレビばかり見ていてはね。誰かと話したい、笑いたいって気持ちが強かった。昔のようにはならないけど、隣近所と顔見知りになり段々と会話できるようになっている」と笑顔を見せる。

 同集会所では、同会以外にもボランティアや市の地域包括支援センターなど各団体がお茶会やアクセサリー作りなどさまざまなイベントを開いているが、参加者の多くは女性が占めるという。このため同会は4月から、孤立しやすい1人暮らしの男性などを対象に安否確認や悩みなどを聞く「ふれあい電話サービス」を始めた。森山さんは「外に出られなくても、電話だけでも誰かとつながっていることが心のよりどころになる」と呼びかけている。